研究倫理審査 RESEARCH ETHICS REVIEW

看護研究倫理指針

研究倫理審査規程 倫理審査手順

序言

クリティカルケア看護の質向上に向け、エビデンスに基づいた看護実践が求められ、より適切な看護実践内容を探究するため多くのクリティカルケア看護に関する研究が推進されている。

クリティカルケア領域における対象は、生命危機状態のため、自分自身による意思決定が難しいことが多く、代諾者となる家族自身もまた危機的な問題を抱えていることが多い。そのため、クリティカルケア領域におけるあらゆる看護研究においては、倫理的、法的、社会的問題への対応が重要な課題といえる。

そこで「日本クリティカルケア看護学会が示す看護研究倫理指針(以下「本指針」と呼ぶ)」では、日本クリティカルケア看護学会会員が、看護者として看護研究を行なう際に遵守すべき倫理的考え方を示した。研究は研究者の責任において実施されるものであるが、日本クリティカルケア看護学会会員が研究を行なう際には、本指針に準拠して研究を遂行することを推進するものである。

本指針は、看護者の行動指針である「看護職の倫理綱領(日本看護協会、2021年)」「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年4月16日文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」「看護研究における倫理指針(日本看護協会、2004年)」に準拠している。

1.指針作成の目的

クリティカルケア領域において研究対象者の権利を擁護するために、看護者が遵守すべき事項を定めることにより社会の理解と協力を得て、看護研究の適正な推進を図ることを目的とする。また、医療機関などの組織が倫理的側面についての審議を行なう際の倫理指針とする。

2.研究を行う上での倫理の原則

クリティカルケア領域における看護研究に対する倫理的配慮では、善行(無害)、人間としての尊厳の尊重、アドボカシー(擁護)、アカウンタビリティ(責任と責務)、個人情報の保護、ケアリングの原則、以上の点に準拠すること。

3.研究対象者への権利擁護

  • 研究対象者または代諾者が不利益または危害を与えられない権利を擁護する
  • 研究対象者または代諾者が情報開示を受ける権利を擁護する
  • 研究対象者または代諾者の自己決定の権利を擁護する
  • 研究対象者または代諾者のプライバシーおよび個人情報が保護される権利を擁護する

4.研究を行なう際の基本的および実施上の配慮

人々を対象とする看護研究は、科学的、また社会的に研究の意義があり研究による不利益を軽減する配慮されたものでなければならない。研究する者および代諾者は研究実施にあたって以下の事項に配慮するものとする。

  • 研究対象者の人権擁護
  • 研究対象者の尊厳および自由意思の尊重
  • 研究対象者のプライバシーの保護
    看護者は、研究を行う過程で得られた個人情報について研究対象者の人権の擁護と尊厳および自由意思の尊重、プライバシーを保護する義務を有し、そのために必要とされる研究試料の管理責任および事故が生じた場合の責任を有する。
  • 研究対象者に対する十分な情報提供・開示とインフォームド・コンセント
    • 看護者は、あらかじめ研究対象者または代諾者に対し、以下に示す事項を文書により説明し、同意を得た上で研究を行なう。
      • 研究の目的
      • 研究の方法
      • 予測される危険性
      • 研究成果の公表
      • 研究への協力に不同意の場合であっても不利益を受けないこと
      • その他、当研究において必要とされる事項
    • 研究対象者または代諾者は、研究への協力に同意した場合でも随時これを撤回することができる。
    • 研究対象者の意思決定能力に疑義がある場合は、研究対象者に説明した上で、さらに、研究対象者の利益を最も代表すると思われる代理人等に対して説明を行い、代諾者の同意も得なければならない。
  • 研究対象者に対する研究によって生じる不利益の軽減
    • 看護者は、研究対象者に侵襲を与える(与える可能性がある)研究においては、研究中止基準を明確にし、事前に医師と協議の上、研究を行なうものとし、緊急時に備えた体制を確立しておく。
    • 看護者は、研究によって生じる不利益を軽減する対策をたてなければならない。
  • 研究対象者および研究者本人を含めた人の安全性の確保 看護者は、研究対象者と研究者を含めて人の安全性の確保に努めなければならない。
  • 科学的、倫理的問題への配慮
    看護者は、研究の実施にあたって、社会的、倫理的妥当性に配慮するとともに研究者名を明記し責任の所在を明らかにする。

5.適用の範囲

本指針は、日本クリティカルケア看護学会会員が行う全ての研究に適用される。

6.倫理委員会の設置

  • 本指針の運用にあたり、日本クリティカルケア看護学会に倫理委員会を設置する。
  • 倫理委員会は、日本クリティカルケア看護学会会員がクリティカルケアの進歩と発展に貢献するとともに、対象者の人権を守り、看護者の倫理の向上をはかるために研究倫理について審議することを目的とする。
  • 研究倫理審査に必要な事項は別に定める。

参考資料