論文投稿者の声 OPINIONS OF PAPER CONTRIBUTORS

日本赤十字看護大学 基礎看護学領域 吉田 里奈

 本研究に取り組んだきっかけは、ICUで働いていた際に、心臓外科手術後に死亡した患者へ対して、本人の意思とは関係なく畳みかけるように治療が進められる状況にジレンマを感じたことでした。ぜひ、有用な研究結果を可視化したいと思い、論文投稿に至りました。
 査読者の意図を読み取り期日内に修正をするプロセスは決して容易ではありませんでしたが、建設的で代替案や方向性を示してくれる助言も多く、深く悩みすぎることなく取り組むことができました。また、熟考を重ねることにより論文を洗練させることができ、自己研鑽の機会にもなりました。論文掲載となった際には、嬉しさと成し遂げた達成感も大きく、ご協力いただいた全ての方への感謝の気持ちでいっぱいになりました。大変貴重な機会だったと感じています。今回の研究成果により、困難やジレンマを抱える看護師の方々にとって、問題解決や対象者へのケアを見直す一助となることを期待したいです。

【研究報告】
「心臓外科手術後の治療中断や差し控えに関する代理意思決定を担う家族への看護実践」2023年19巻p.25-35

筑波大学附属病院 看護部 ICU 小﨑 麗奈

 私は、2022年度に掲載いただきました論文「急性重症患者の終末期治療に対して救急・集中治療領域の看護師が行う代理意思決定支援の実践と影響要因」において、2023年度奨励論文賞を受賞しました。本論文は、COVID-19感染症流行中にデータを収集し、多くの皆様のご協力のもと完遂いたしました。論文が掲載された時には、いかなる情勢においても臨床の未知なる事象を明らかにし、今後の看護の発展に寄与するという研究者としての自覚が強まる思いでした。
 論文投稿においては、指導教授による継続的な指導をはじめ、査読者の先生方からいただきました多くの建設的な意見により、査読の回数を重ねるごとに自身の主張が明快となりました。また、一連の過程を経て、臨床での様々な取り組みで得られた成果を論文として報告する意義やその楽しさを学ぶことができました。今後は、論文投稿経験者として、臨床からより多くの知見を発信できるよう、取り組んでいきたいと思います。

【原著】
「急性重症患者の終末期治療に対して救急・集中治療領域の看護師が行う代理意思決定支援の実践と影響要因」2022年18巻p.101-112

札幌市立大学 看護学部 栗原 知己

 この度、本学会誌に掲載いただきました論文「人工呼吸器ならびにVV-ECMOの管理を要する患者への看護に必要なコンピテンシーに関する調査」に対して、2023年度優秀論文賞をいただきました。ご査読いただきました先生方、選考していただきました先生方に心より感謝申し上げます。また、この研究にご協力いただいた看護師の皆様、この場を借りて深く感謝申し上げます。
 この研究は、人工呼吸器やVV-ECMOを装着した患者の看護に不慣れな看護師や、そのような看護師の教育を担う方々にご活用いただける研究成果を目指しました。ご協力いただいた看護師の方々には、複数回のアンケート調査によって多大なるご負担をおかけしたことと存じます。ですが、皆様のご協力により、非常に充実した結果を得ることができました。皆様と作り上げたこの論文を、多くの方にご活用いただけましたら研究者一同幸いに存じます。

【原著】
「人工呼吸器ならびにVV-ECMOの管理を要する患者への看護に必要なコンピテンシーに関する調査」2022年18巻p.92-100

金沢大学附属病院 看護部 松本 亜矢子

 私は、論文「集中治療室で身体抑制の減少に取り組んだ看護師の思考のプロセス」で奨励論文賞を受賞させていただきました。集中治療室という患者の生死にも関わる場所で決して簡単ではない身体抑制減少に取り組んだ看護師の思考プロセスかを明らかにすることにより、患者の尊厳を大切にした看護の発展や今後の看護師教育に役立てたいと考え本研究に取り組みました。分析では修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いることは初めてであり、勉強することからスタートし苦労したことも多かったですが、結果が得られ論文として採択された時には何とも言えない達成感と根気強くご指導・応援してくださった方々への感謝の気持ちでいっぱいになりました。私は看護実践者であるため、今後は研究で得られた結果を日々の看護実践や現場での教育に活用し、患者にとって最善の看護をチームで提供できるよう努めていきたいと思います。

【研究報告】
「集中治療室で身体抑制の減少に取り組んだ看護師の思考のプロセス」2022年18巻p.43-53

関西医科大学大学院看護学研究科 博士後期課程 森島 千都子

 この度は2023年度の奨励論文賞をいただき誠にありがとうございます。査読の先生方、選考していただいた学会関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
 私は臨床経験から、医療の進歩によって長期生存が可能になった重症患者とその家族にたいして、ICU在室時から長期予後を視野に入れた家族援助の必要性を感じました。ポジティブな変容をもたらすレジリエンスの概念に着目した援助モデルを作成し、患者の闘病を支える家族の健康や生活の自立を促進できればと考えております。そこでまず、クリティカルケア領域のレジリエンスの概念を明らかにするために今回の研究に取り組みました。レジリエンスは様々な領域で多用されていますが、クリティカルケア領域でのレジリエンスの文献はほとんどが海外論文であったため、指導教授に翻訳間違いを指摘されながら修正したことは懐かしい思い出です。研究成果を臨床現場に還元できるよう引き続き研究を進めて参ります。

【総説】
「急性重症患者の家族成員におけるレジリエンスの概念分析」2021年17巻p.98-109

福岡県立大学 看護学部 看護学科 宮本 いずみ

 この度、「手術室看護師の看護実践能力評価尺度の開発」の論文が奨励論文賞をいただき、光栄に思っております。
 本研究では手術室看護師の皆様から多大なご協力を賜りました。その高い回答率から手術室看護師の方々が本研究に深い関心を寄せていることを実感し、回答に加えて「手術室の看護実践能力の明確化を期待しています」「研究成果を楽しみにしています」というメッセージをいただきました。私は手術室看護師の皆様に必ず成果をお伝えするという使命感を胸にこの研究に取り組んできました。研究の過程で、共同研究者や査読者の先生方から有益なご意見をいただき、より品質の高い論文となりました。論文の公表後、本尺度が手術室看護師の看護実践能力の評価として臨床の場や研究に使用されており、そのことが何よりも喜ばしいです。今後の研究においても安全で信頼できる周術期の看護を提供するために、より一層の成果を追求し、貢献できるよう努力していきたいと思います。

【原著】
「手術室看護師の看護実践能力評価尺度の開発」2021年17巻p.80-88

大分大学医学部附属病院 竹下 智美

 私は、平成28年(2017年)に大学院修士課程において、「人工呼吸器離脱プロトコルの有効性の検証」を研究課題として取り組みました。
 当時、高度救命救急センターで勤務しており、業務としてプロトコルを活用することと、研究としてデータ収集することは当然ながら全く異なり、研究計画段階に苦労したことを覚えています。研究プロセスを通して研究者としての立ち位置、研究倫理をあらためて深く考えることができました。論文投稿においては、査読を受け修正を繰り返す過程は大変ではありましたが、推敲を重ね、完成・受理された時は、達成感とともに共著者とご指導・ご助言いただいだいた方々への感謝の気持ちでいっぱいでした。研究を通して、探求する面白さを経験でき、この気持ちを忘れずに今後も臨床研究・臨床実践につなげていきたいと思います。

【研究報告】
「人工呼吸器離脱プロトコル」の有効性の検証」2021年17巻p.31-43

中部大学 生命健康科学部 保健看護学科 江㞍 晴美

 この度、論文「集中治療後症候群を早期発見するためのアセスメントツールの信頼性と妥当性の検証」に対して、令和4年の奨励論文賞をいただき誠にありがとうございました。大変励みになります。査読の先生方、選考していただきました先生方に深謝いたします。
 皆さんも経験があると思いますが、研究を行う過程では、多くが辛い時間かもしれません。文献を探し、英語論文に苦戦し、ようやく目的を決めてもデータ収集が進まない、考察がまとまらないなど、何度も壁に当たります。より良い論文にするための指摘とわかっていても、査読者のコメントに落ち込むこともあります。しかし、もうひと踏ん張りして論文が掲載されたときは、晴れやかな気分です。
 私にとって研究を行う上で、語り合い励まし合う仲間は不可欠です。皆さんも仲間を大事にして、研究を進めて論文を公表しましょう!研究を積み重ね、クリティカルケア看護のエビデンスを構築するのは、私たちです。

【研究報告】
「集中治療後症候群を早期発見するためのアセスメントツールの信頼性と妥当性の検証」2021年17巻p.11-20

秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻 看護学講座 武藤 諒介

 私は、本学会誌に掲載頂きました論文「A病院ICUにおける二交代制勤務導入前後の看護師のバーンアウトおよび職務満足度の変化」で2022年度奨励論文賞を受賞させて頂きました。
 現在は教職として看護学生の教育を行っておりますが、本研究は当時所属していたICUから教職に移った年に行った思い入れのある研究になります。当時行われていた二交代制勤務の導入を研究として客観的に評価し、結果を臨床現場に返したいという思いが本研究の実施を後押ししていたように思います。
 今回、論文掲載を経て、このような賞を頂いたことで改めて協力くださった皆様へ恩返しができたのではないかと思っています。自分のこれからの役割の一つとして臨床と研究、教育を結び付けていくことが大切だと思っています。これからも精進して参りたいと思います。今回、論文投稿者の声としてこのような機会を頂きありがとうございました。

【原著】
「A病院ICUにおける二交代制勤務導入前後の看護師のバーンアウトおよび職務満足度の変化」2021年17巻p.1-10

名古屋学芸大学 伊藤 美智子

 私は、平成28年度日本クリティカルケア看護学会研究助成を受け、「クリティカルケア看護領域新人看護師への終末期ケア教育プログラムの作成と効果の検証」という研究をさせていただきました。研究助成は、研究協力者の方への謝金や研究に使用する書籍・文献等に使用し、その結果として充実した研究を行うことができたとともに、学会発表や論文投稿につなげることができました。研究を行い、それを論文にし、投資するまでには時間もかかりましたが、研究助成期間から論文投稿までにも期間を設けていただいていたため、共著者とともに論文を遂行する期間に充てることができました。
 1つの研究を遂行するには、費用も時間もかかりますが、研究助成をいただいたことで、計画的に予算管理をしながら期限内に研究を進め、論文を投稿するという一連の管理についても学ぶことができたと思います。大変感謝しております。ありがとうございました。

【研究報告】
「救急・集中領域で終末期を迎える患者の看護に対する中堅看護師の学習ニーズ」2020年16巻p.65-72

長崎大学大学 院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 大山 祐介

 「Verification of construct validity for comfort indicators of critically ill patients」というテーマの論文が令和4年に奨励論文賞を受賞しました。
 救急患者にかかわる中で、苦痛を緩和することの難しさを感じていたことが、このテーマで研究に取り組んだきっかけです。クリティカルケア看護におけるコンフォートとは何か?と探究するなかで以下のことを見出しました。それは患者さんが「症状緩和」「自立性」「平静」「満足」を知覚することです。これらに含まれる要素は重症患者がコンフォートであるかアセスメントする視点や目標になると考えています。現在、患者を対象にしたコンフォートに関する研究を継続しており、その結果をもとにさらに内容を洗練させていく予定です。研究成果を発表することで、臨床での看護実践や患者の回復に貢献できるよう努力したいと思います。また、この研究でご協力いただいた看護師の皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

【研究報告】
「急性・重症患者看護専門看護師が患者のcomfortに向けたケアにかかわる体験」2020年16巻p.54-64

総合病院 土浦協同病院 上澤 弘美

 2013年度に「初療で代理意思決定を担う家族員への関わりに対して看護師が抱える困難と理由」の論文が掲載され、2021年度には「生命の危機的状態で初療室に救急搬送された患者の家族がたどる代理意思決定のプロセス」の論文で優秀論文賞を受賞いたしました。論文が掲載されるまで、査読者の先生方から多くの建設的な意見をいただき、修正を重ねるごとに良い論文になっていくことを実感することができました。論文が掲載された時には、成し遂げたという達成感と同時に自身の論文が多くの人の目に触れる機会が増えることで、少しでも臨床の現場での看護実践に寄与することができるという思いが膨らみました。
 論文が掲載されるまでの道のりは、決して楽なものではなく辛く険しい道のりですが、論文の内容が現場での問題解決の一助となったり、新たに看護実践に取り組んだりするなど、実践の現場に寄与することができていると実感することが、研究を行う原動力になっています。

【原著】
「生命の危機的状態で初療室に救急搬送された患者の家族がたどる代理意思決定のプロセス」2020年16巻p.41-53

三重県立看護大学 成人看護学 関根 由紀

 私は、今までの臨床経験や研究活動の中で、集中治療を終えた心不全患者が初回立位時に 自身の足で立てず自信や治療への意欲を失う患者と多く出会い、そのような状況にならないための看護が必要だと考えています。現在は、早期リハビリテーションが行われ初回に立てる患者が増えていますが、そうでない患者もいます。私は集中治療後に初回立位が取れる、取れないには何か要因があるのではないかと考え、今回の研究に取り組みました。データ収集は大変でしたが、どのような結果が得られるのか、どのように臨床に還元できるのかが楽しみでもありました。
 今回の研究成果は、初回立位が困難と予測される患者に対して、状態が安定したのちに看護師もリハビリテーションを行うことや患者に心構えを促し、安全な初回立位の実施や患者が自信を失わずに前向きに治療やリハビリテーションに取り組み、社会復帰に向けた看護につながるのではないかと考えています。

【原著】
「急性心不全患者における初回立位の可否に関連する要因の探索」2019年15巻p.121-133

国家公務員共催組合連合会 横浜南共催病院 田村 直美

 私は、平成26年度(2014年度)奨学助成を受け、2017年に「急性期病院に勤務する看護師の自律性と看護実践環境との関連」で論文掲載に至りました。
 集中ケア認定看護師としてICUで勤務していた私は、管理学の立場から集中ケアを見つめなおしてみてはどうかという恩師の誘いを受け、大学院で看護管理学を専攻し研究に取り組んでいました。看護管理学を専攻しながらクリティカルケア看護学会の研究費助成に応募して良いものか迷いつつ、思い切って応募してみました。結果的には10万円の助成をして頂くことになり、感慨深い気持ちになったことを覚えています。同時に研究成果の発表と学会誌投稿という義務が発生した事で、気持ちを途切れさせることなく論文に向き合えました。査読を受け、論文を修正していく過程で身につけた思考過程は、臨床現場での複雑な問題を整理する事にも役立っています。そして現在も、病院で勤務しながら臨床研究に取り組んでいます。

【研究報告】
「急性期病院に勤務する看護師の自律性と看護実践環境との関連」2017年13巻3号p.39-47